WORKSHOP REPORTワークショップレポート

WORKSHOP REPORTワークショップレポート

2025-05-26

社員の内発的対話から生まれる「第3のイノベーション」
― 山十株式会社 × LEGO® SERIOUS PLAY®による産学連携ワークショップ

実施企業: 山十株式会社(福岡県北九州市)
実施時期: 2024年9月

ファシリテーション・設計:
下田泰奈(北九州市立大学 特任研究員)
聞間理(九州産業大学 教授)
鎮目悠治(鎮目研究所 代表)
吉田達哉(山十株式会社 代表取締役)

寄稿: 下田泰奈

■ 山十株式会社とは?(実施企業紹介)

山十株式会社は、福岡県北九州市を拠点に、木材・建材の販売および住宅設備工事を手がける創業120年を超える地域密着型企業です。住宅メーカーや設計事務所との長年の信頼関係をもとに、住宅・建築業界の現場を支え続けてきました。

同社代表の吉田達哉氏はLEGO® SERIOUS PLAY®(LSP)認定ファシリテータでもあり、社内では戦略策定、組織開発、人材育成といった多様な目的に対してLSPメソッドを継続的に活用しています。LSPメソッドを活用した社内研修やワークショップを定期的に実施しており、組織内のコミュニケーションや意思決定プロセスに積極的に取り入れられています。そのため、LSPが日常の意思決定や組織対話の手法としても根付いており、今回のワークショップもそうした実践の延長線上にある、意欲的な取り組みとして位置づけられます。

■ 理論と実践を横断する「第3のイノベーション」とは?

今回のワークショップの核となったのが、「第3のイノベーション」という概念です。これは、MITスローン経営大学院のデビッド・ロバートソン教授が提唱したもので、レゴ社の事業再建を分析した著書『Brick by Brick(邦題「レゴはなぜ世界で愛され続けているのか?」、日本経済新聞出版社)』を通じて知られています。

従来のイノベーションは、

  • 既存製品を改善する「漸進的イノベーション」
  • 市場構造を変革する「破壊的イノベーション」

という二極で語られてきましたが、第3のイノベーションでは、既存のコア製品を中心に、補完的価値を組み合わせた“エコシステム”を構築することによって、競争力を高めるというアプローチが取られます。この戦略思想は、LEGO® SERIOUS PLAY®の方法論と極めて親和性が高く、LSPが持つメタファーによる抽象化と共有、3Dモデルによる構造化、多様な視点の共有と対話といった特性を活かすことで、「価値の周辺」に潜む可能性を発見、創造する場を出現させます。

今回のワークショップは、まさにその理論を実践的に体現する試みとして設計されました。

■ ワークショップ設計の工夫と進行構造

本ワークショップは、山十株式会社の中堅~若手社員6名を対象に、半日(約4時間)のプログラムとして実施されました。LSPの基本構成に則り、以下の4つのステップで構成されました。

  • 1)スキルビルディング
    LSPワークショップに必須の導入演習、安全で全員参加の場を作る魔法のような導入演習です。メタファーの使い方やストーリーテリングのリズムに
    慣れる時間です。
  • 2)個人モデル構築
    「自分の仕事の価値とは?」という問いに対して、それぞれが自らの思いや意図をレゴ作品に込めて表現します。
  • 3)共有作品とランドスケープ構築
    個人モデルの意味をつなぎ合わせて組織内で価値がどのように生まれているか、どのような連携が存在しているかを立体的に構成します。
  • 4)関係性の探究
    レゴ作品間の多様な関係性を明示し、どのような連携が今後の価値共創につながるかを議論します。

■ 参加者の声:見えていなかった価値が見えてきた

  • 「自分の仕事を“構造物”としてとらえることで、普段意識していなかった役割に気づいた」
  • 「他部署との関係性を視覚的に捉え直すことで、新しい協働のヒントが生まれた」
  • 「“レゴブロックを使って考える”という非日常の場が、自由な発想を促してくれた」

ワークショップ後には、各自がモデルを指さしながら「この連携がもっと強化されれば…」「このギャップを埋めるにはどうすればよいか?」といった建設的な対話が自然に生まれ、LSPのもたらす思考の“流れ”が組織内に浸透していく様子が見られました。

■ ファシリテーター所感(下田泰奈)

今回は「価値とは何か?」という問いを、抽象的な議論ではなく、具体と構造の中で深めるプロセスを重視しました。LSPは、言葉だけでは共有できない“感覚”や“意図”を可視化し、共感から行動へとつなげる触媒になると改めて実感しています。経営者がLSPの理解者であることが、場の深まりと持続性を後押ししていた点も印象的でした。

■ 今後の展望

ワークショップを通じて見えてきたのは、「製品そのもの」ではなく「周辺の体験や関係性」にこそイノベーションの芽があるということ。今後は、こうした視点を生かした社内プロジェクトや、顧客・パートナーとの共創活動に展開されていく予定です。

 


■ イノベーションを支援するために

(株)ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツでは、「第3のイノベーション」理論を活用し、LSPメソッドによる企業の創造的変革を支援するワークショップの企画・設計・実施を行っております。

新しい価値創出に向けて社内の知とつながりを引き出したいとお考えの方は、ぜひ下記までお気軽にご相談ください。

メール問い合わせ先:support@seriousplay.jp