WORKSHOP REPORTワークショップレポート

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2025-12-04

住民同士が語る「10年後のわたしたちの町」―島根県飯南町でのレゴ®シリアスプレイ®ワークショップ実施報告


2025年11月29日、島根県中部の山間に位置する小さな自治体・飯南町(いいなんちょう)で、町民向けのレゴ®シリアスプレイ®(以下、LSP)ワークショップが開催されました。

本ワークショップは、町の人材育成事業の一環として「対話による関係性の構築」「住民の主体性の喚起」「地域課題への多世代での共感的アプローチ」を目的に企画されたものです。

当日は、高校生から高齢者までの町民が参加して濃密な対話の場が生まれました。

なぜ今、「対話」に取り組むのか?

人口約4,500人、広大な森林と清らかな水源を持つ自然豊かな町・飯南町。過疎化や少子高齢化が進むなか、町では住民と行政が連携しながら「小さな町だからこそできる」まちづくりを進めています。

こうした中で、近年注目されているのが“対話”の力です。

飯南町まちづくり推進課の神谷晴子さんは次のように語ります。

「職員だけでなく、地域住民一人ひとりが“まちをつくる担い手”として関わっていく必要があります。でも、その第一歩として必要なのが、互いを知ること。普段接点のない世代や立場の違う人たちが、安心して対話できる場をどうやってつくるかが大きな課題でした。」

そこで選ばれたのが、LSPを用いた対話でした。

LSPは、レゴブロックを使って「手で考える」ことで、年齢や言語能力に関係なく、誰もが自分の考えを表現できる仕組みを持っています。可視化された作品を通じた対話が、安心と気づきを生み出します。


ワークショップ設計の工夫:小さな町で、意味ある対話をつくるには?

● 個別表現から集合知へ

最初に各自が「10年後の飯南町に自分が残しておきたいもの」をレゴ作品で表現。高校生の参加者からは「町民同士や町内地域同士のつながりを育てる場所」、年配の町民からは「過去から受け継いできた銀杏の大樹などの自然資産」など、多様な視点が語られました。

個々の想いを共有した後で、すべての個人作品を一つの大きな「ランドスケープ(景観モデル)」として、参加者によって「スーパーストーリー」としてその意味が語られ全員で共有しました。

最終的に、参加者たちは「このビジョンを実現するために、明日から自分ができること」をテーマにレゴ作品を再び作成しました。

草刈りやゴミ拾いを続ける、地域の催しに若者を誘う、まずは身近な人たちへ関心を持ち語りかける、町の施設の使い方を調べて教えるなど、小さな行動宣言が次々と生まれていきました。

ワークショップを終えて:参加者の声

ワークショップの終了後、参加者からは以下のような声が聞かれました。

「普段、頭の中で考えていることを言葉に出すのが苦手。でも今日は、レゴで表現したおかげで、自分でも驚くくらい話せました」(高校生)

「若い人が町のことをちゃんと考えていると知って感激した。こんなに素直に話を聞ける場があるとは思っていなかった」(50代・町民)

このように、この日の体験ははワークショップという枠を超えて、「自分の声が町の未来に繋がっている」という実感を参加者にもたらしました。

小さな自治体だからこそできる「深い」対話

今回の飯南町での事例が示しているのは、小規模な自治体だからこそ、LSPが効果的に機能するという可能性です。

人数が少ないことで、参加者全員の声にじっくり耳を傾けることができる。地域の関係性や実情を知るファシリテーターが同席することで、単なる表面的な対話ではなく、地域に根ざした深い語り合いが可能になる。

そして何より、LSPが提供する「作品を使って話す」というアプローチは、発言に慣れていない人にとっても「話しやすい場」を提供してくれます。

LSPを地域の共創プロセスに組み込む

今回の飯南町での取り組みは、LSPが単なるワークショップツールではなく、地域社会における「共創のプロセス」の一部として活用できることを示しています。

町の未来を行政だけでなく、住民とともにつくっていく。そのための第一歩として、LSPは「互いを理解し、聴き合う場」を提供し、主体性を育む大きな力を持っています。

これからの地域づくりにおいて、「対話」は必須のキーワードになるでしょう。そしてその対話を可能にする方法として、LSPは多くの自治体にとって有効な手段となり得るのです。

小さな町で開催された小さなワークショップは、これからの地域社会の在り方に示唆を与えてくれます。

島根県飯南町公式ホームページ
https://www.iinan.jp/

※本事例について詳しくお知りになりたい自治体・団体様は、お気軽にお問い合わせください。
support@seriousplay.jp