2025-10-10
「LSPで広がるキャリアと実践:ファシリテータたちの物語」 第7回
LEGO® SERIOUS PLAY®(LSP)は、世界中で組織変革や教育の現場に導入されている、対話と創造のためのメソッドです。
この記事では、LSPファシリテータ養成トレーニングを修了した方々の実践と気づきを紹介します。彼らがどのように自分の仕事や人生にLSPを取り入れたのか——その生の声から、あなた自身の現場でのヒントや次の一歩を見つけていただければと思います。
今回のインタビュー: IT業界で30年以上営業をはじめマーケティングやコーポレートなど様々な職種や役職で最前線を走り続けてきた尾張真司さん。数々の顧客や組織と向き合ってきた経験の中で出会ったのが、LEGO® SERIOUS PLAY®という対話の手法でした。ブロックを手にした瞬間、人は自然に語り出し、言葉では届かなかった思いや考えが立体的に伝わり始める。――その驚きをきっかけに、尾張さんはファシリテーターとしての道を歩み出しました。
キャリアと背景
Q:まずは自己紹介をお願いします。
尾張真司と申します。現在はIT業界で営業職をしています。今の会社には20年以上在籍しており、長く一つの会社に勤めることが多い日本社会の中でも「外資系やベンチャーを渡り歩いたあとに腰を落ち着けた」という点で、少し珍しいキャリアかもしれません。
キャリアのスタートは新卒で入社したアメリカの外資系企業でした。当時、その企業はLAN(ローカルエリアネットワーク)の老舗で強みを持っていて、これから「ネットワーク社会」が本格的に広がると予感していた私は、迷わず飛び込みました。大学時代は文系でしたので、技術的な知識は決して豊富ではありませんでしたが、「時代の波に乗りたい」「新しい領域で挑戦したい」という気持ちが強かったんです。
その後、外資系を中心にグループウェアやアプリケーションなどいくつかのレイヤの会社を経験し、ベンチャー企業で立ち上げを支えたこともあります。環境が変わるたびに新しいカルチャーや働き方を学びましたし、ときには失敗から多くを学ぶこともありました。
今振り返れば、チャレンジを続けたキャリアでしたね。また今の会社では若い営業の研修講師や新任や既存マネージャー職の1 on 1の実践トレーニングをコンテンツ開発から行うなど人材育成やコーチング業務も約10年程実施してきました。そうした背景や経験があるからこそ、LSPに出会ったときにも「色々な業務に親和性がある、面白い、やってみたい」と素直に感じられたのかもしれません。
LSPとの出会い
Q:LSPを知ったきっかけは何だったのでしょうか。
最初にLSPに触れたのは2022年の夏でした。当時、私は会社のコーポレート部門でチームビルディング研修の企画する側でした。幾つかのプログラムの中から、採用されたのがLSPでした。私は純粋な参加者ではなく、企画者として関わったのですが、実際にセッションに参加してみると、想像以上の変化を目の当たりにしました。
普段は会議で意見が出にくい社員が、レゴを手にすると饒舌に語り始めたり、普段は発言の少ない方が自分の想いを堂々と形にして共有したりする。その場にいた全員の表情がどんどん変わっていくのを見て、「これはすごい」と心から思いました。言葉ではなく、手を使って考え、形を通して語る――これまでの研修では得られなかった体験でした。
セッション後、すぐにファシリテーターの方に「自分もやってみたい」と声をかけました。そこで資格制度があることを知り、受講を検討し始めました。ただそのときはタイミングが合わず、1年ほど間を空けてしまいましたが、思いを諦めることはありませんでした。そして2023年、ようやくトレーニングに参加することができたのです。
トレーニングでの体験
Q:実際にトレーニングを受けてみて、どんな印象を持ちましたか。
4日間のトレーニングは想像以上に濃厚でした。特に印象的だったのは、「組織のためのリアルタイムストラテジー」というアプリケーションでした。そのプロセスの中で、エージェントと呼ばれる、いわゆる「ステークホルダー」を一つ一つレゴで表し、コネクターで関係性をつなぎ、さらにイベントや緊急事態をシナリオとして投入する――そうすると、普段の会議ではなかなか見えてこない「関係の構造」や「影響の連鎖」が立体的に浮かび上がってくるんです。まるでシミュレーションゲームをプレイしているような感覚でありながら、実際の組織課題に直結している。これは経営企画や戦略立案の現場にこそ必要だと実感しました。
さらに、自分たちの「譲れない価値観」を持ち寄って共有モデルを作るワークも心に残りました。個人の思いを形にし、それを一つに統合していく過程では、お互いに意見の違いが浮き彫りになります。でもその違いこそが議論を深め、モデルを豊かにしていく。最終的に完成したモデルには、参加者全員のエッセンスが込められていて、見るだけで「自分たちはこういうチームなんだ」と実感できるんです。
タイミング的にも、コロナ禍が明ける頃で、リアルな場でのコミュニケーションを再構築する必要がありました。オンライン会議では得られなかった「本当に相手とつながっている感覚」を取り戻せたのは大きな収穫でしたね。
得られたもの
Q:トレーニングを通じて得られた最大の収穫は何ですか。
一番は「仲間」との出会いです。4日間という短い時間ですが、濃密に共に学んだ仲間やファシリテーターとは、今も交流が続いています。同期以外のファシリテーターともコミュニティでお互いの現場での実践をシェアし合ったり、情報交換をしたり、時には相談に乗ってもらったり。単なる学びの場を超えて、人生の財産になりつつあると感じています。
もう一つは「新しいコミュニケーション手段を得たこと」です。レゴを介して会話するという手法は、言葉だけのやり取りでは得られない深さを生みます。例えば、自分の思考や感情を言葉にするのが苦手な人でも、ブロックを使えば自然に表現できる。そしてそのモデルを前にすれば、相手も理解しやすくなる。これは家庭や地域活動でも使えるし、ビジネスの現場ではなおさらです。正直、このメソッドを知らずに人生を終えていたら、大きな損失だったとすら思います。
実践の場での手応え
Q:現在、どのようにLSPを活用されていますか。
私はIT業界で特に営業という立ち位置が長かったこともあり、社内外の多くの人と関わる機会がありました。その人脈を活かし、日系や外資系IT企業のオフサイトミーティングなどでLSPを導入しています。テーマはチームビルディングが中心ですが、組織の課題共有やビジョン策定や浸透にも応用できると感じています。
セッション後にアンケートを取ると、8〜9割の参加者がポジティブな反応を示してくれます。「普段の研修よりも圧倒的に楽しく、学びが深い」「話しにくいことも自然に言えた」などの声をいただきます。もちろん中には懐疑的な意見もありますが、それは全体のごく一部。むしろ「またやってみたい」「他のテーマでも試したい」と言われることが多く、ここに大きな手応えを感じています。
今後の展望
Q:これからの展望を教えてください。
今後はLSPを活動のコアに据えながら、キャリアコンサルタントのノウハウなども掛け合わせ、サービスの幅を広げたいと思っています。企業のイノベーションや個人のキャリア支援と組織の変革支援をLSPで橋渡しできれば、多くの人の人生や組織の在り方に良い影響を与えられると考えています。
すでに「ブリックスタイルラボ」という屋号を掲げていますのでLSPをコアに活動することはブレずに継続していきたいと思います。4〜5年後には本業として独立し、LSPを中心にした活動で生計を立てるのが大きな目標です。そのためにも今は、実績を積み、事例を増やし、信頼を築く段階だと思っています。推しのスポーツチームにLSPでワークショップをするのも夢ですし、楽しんで仕事もしていきたいですね
トレーニングの受講料は確かに安くはありません。しかし、実際に活用してみると、その価値は十分にあると断言できます。むしろ「これだけの可能性があるなら安い」とすら思えます。もし迷っている人がいるなら、ぜひ一歩踏み出してほしい。LSPは単なる研修ツールではなく、人と人とをつなぎ、人生そのものを豊かにするメソッドだと私は確信しています。
尾張真司
レゴ®シリアスプレイ®メソッドと 教材活用トレーニング修了認定ファシリテータ
LEGO® SERIOUS PLAY® ファシリテータ養成トレーニングのご案内
(株)ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツが提供する公式LEGO® SERIOUS PLAY®メソッドと教材活用トレーニングは、4日間でLSPの哲学と実践を体系的に学べるプログラムです。
対象:
キャリアの軸を模索している方、ファシリテーションや組織づくりに関心を持つ方、教育・研修の現場で「もっと参加者が主体的に関わる場をつくりたい」と感じている方に特におすすめです。尾張真司さんのように仕事や職場で使える「新しいコミュニケーション手段」を求めている方には新しい武器となるでしょう。
トレーニングの内容:LSPの背景理論、基本プロセス、プログラム設計と実践演習
詳しくはこちらをご覧ください。
修了証:Association of Master Trainers in the LEGO®️ SERIOUS PLAY®️ method(本部:デンマーク)発行の公式修了認定証を授与
2025年は10月・11月・12月に開催予定!
お申し込み・詳細はこちら。