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2025-10-12

「LSPで広がるキャリアと実践:ファシリテータたちの物語」
第8回

LEGO® SERIOUS PLAY®LSP)は、世界中で組織変革や教育の現場に導入されている、対話と創造のためのメソッドです。

この記事では、LSPファシリテータ養成トレーニングを修了した方々の実践と気づきを紹介します。彼らがどのように自分の仕事や人生にLSPを取り入れたのか——その生の声から、あなた自身の現場でのヒントや次の一歩を見つけていただければと思います。

今回のインタビュー:

ANA客室乗務員として7 年半勤務後、ニュージーランドでの挑戦や企業の人事・経営企画などを経て、現在はキャリアコンサルタント/メンタルヘルスカウンセラーとして活動する田栗万悠さん。彼女が出会ったLEGO® SERIOUS PLAY®は、言葉では表せない思いや組織の課題をブロックで可視化し、深い対話を生み出す新しい手法でした。


プロフィールとキャリアの歩み

Q】 まずは簡単に自己紹介と現在の活動について教えていただけますか?

田栗万悠(たぐり・まゆみ)と申します。「グリ」と呼ばれることも多いです。現在、組織開発を進める上で現場の声を聴くべく、キャリアコンサルタント/メンタルヘルスカウンセラーとして活動しており、人事部門や経営者の方々と協力しながら社員のキャリアやメンタル面の支援を行っています。

企業と年間の法人契約を締結し、その枠組みの中で必要に応じて現場に伺い面談付きの研修やアセスメント・調査の報告を行っています。

Q】 社会人になられてからのバックグラウンドも伺えますか?

最初のキャリアは全日空の客室乗務員です。20代後半にはチーフパーサーとして客室責任者を務め、機長と連携しながら安全点検やサービス全般を取りまとめました。

世界的な出来事――9.11SARSを経て「キャリアをシフトしたい」と考えるようになり、ニュージーランド・クライストチャーチへ渡航。現地の大学ではホスピタリティマネジメントを学び、クラウンプラザホテルや有名レストランでシニアF&Bとして、サービス(翻訳、通訳含む)提供をしていました。2 年間の挑戦の後、結婚を機に帰国し、人事採用教育・総務・経営企画などバックオフィスなどの管理系業務を通して、社員の個別相談に乗る機会などに恵まれました。

この多様なキャリアが、今のキャリアコンサルタント/メンタルヘルスカウンセラーとしての活動に繋がっています。

LEGO® SERIOUS PLAY®との出会い

Q LSPとの出会いはどのような経緯だったのでしょう?

組織開発の文脈で海外から招聘されるファシリテーターたちがLEGO®を活用したワークショップを開催されることがありました。最初は、そのLEGO®ワークとLEGO® SERIOUS PLAY® LSP)の違いが分かっていませんでした。そこで、弊社で研究会を行っていた際、「ジョブ・クラフティング×LSP」のテーマで友人にワークショップを開催していただいたのです。そのとき、LEGO®ブロックを使うことで想像以上に深い議論が生まれるのを体験し、「これは単なる遊びではない」と直感しました。

LSPは背景に組織開発や心理学の理論がしっかり根付いていることもわかり、知的興奮が冷めない感覚がありました。「アジア・コミュニティ・ミーティング(ACM)」や「グローバル・コミュニティ・ミーティング(GCM)」の存在も知り、「そこに参加するために資格を取りたい」と考えるようになりました。まさに、源流にたどり着くためのパスポートを得る感覚でしたね。

トレーニングの印象

Q】 実際にトレーニングを受講してみての印象はいかがでしたか?

一言で言えば「とにかく面白かった!」です。

私は構造や仕組みを理解するのが好きなのですが、LSPのトレーニングでは「なぜこの手順を踏むのか?」を徹底的に考えさせられました。たとえば、なぜ同じ問いを繰り返すのか、なぜモデルの意味を毎回確認するのか。表面的には単純な手順に見えても、背後には深い意図がありました。

Q】 印象的だった瞬間を教えてください。

日本語版マニュアルを見たときの衝撃です。分厚く細かい規定が書かれていて、「これは大変だ」と思いました。けれども、あれを徹底して基礎をつくることこそがLSPの真価を支えていると気づきました。また、トレーナーの方々が何度も同じ問いを繰り返す姿を見て、「ただの形式ではなく、参加者全員が100%の力を発揮するための設計なんだ」と腹落ちしました。

さらに忘れられないのは「ランドスケープ」と「システム」づくりです。個々のモデルを配置し、さらにコネクタでつなぎ、パノラマとして全体像を俯瞰したときに、一見関係のないピースが意味を持って組み合わさる。その過程で「自分のモデルにはこんな意味があったのか」と再発見する瞬間がありました。参加者全員が一体となって悩み、考え、納得していく姿は、他のワークショップでは味わえないものでした。

あの4日間は、単に技術を学ぶ場ではなく「人と人とがつながる力」を身体で感じる時間だったと思います。終わったときには「これは自分のキャリアにも必ず生きる」と確信しました。

トレーニング後の変化

Q】 トレーニング後、ご自身の仕事や考え方に変化はありましたか?

大きな変化がありました。

以前は「組織をどう変えるか」に重点を置いていましたが、今は「一人ひとりの声をどう引き出すか」にシフトしています。

LSP
は「全員が100%参加する」ことを前提に設計されていますが、これはカウンセリングの場面にもそのまま応用できます。実際に面談の際、「この人がLEGO®ブロックで表現したらどんな世界が立ち上がるだろう」と想像するようになりました。

言葉にできない内面を可視化することで、より深い理解につながる。
LSP
を知る前とは、クライアントとの向き合い方が大きく変わったのです。

現場での実践と葛藤

Q】 実際の現場ではどのように活用されていますか?

オンラインでのカウンセリング、自治体や大学での研修、企業研修など、年間3040回ほど実施していますが、やはり、葛藤はあります。マニュアル通りに進めると色合いが乏しく感じることがありますし、問いの質やフィードバックの仕方はマニュアルに載っていません。

特に変容を求められる研修では「これで良かったのか」と振り返ることが多いです。
参加者が何をハーベストとするか、どんな気づきにつながるかを常に考えながら問いを設計しなければならない。ファシリテーターとしての腕が問われる部分であり、だからこそ日々学びが尽きないのだと思います。

今後の展望

Q】 今後のビジョンを教えてください。

まず興味があるのは「コミュニティのあり方」です。

GCM(グローバル・コミュニティ・ミーティング)で、世界中のファシリテーターがフラットに語り合う姿を見たとき、「なぜこんなにも真剣に遊べるのか?」と心を動かされました。そこには単なる学習以上の価値があると感じました。大人たちが国籍も職業も超えて夢中になれる場はそう多くありません。この経験からLSPコミュニティの仕組みの在り方を研究したい」という想いが芽生えました。

どうすれば人は安心して自己開示し、深い対話に没入できるのか。その条件を整理し、他の場づくりにも応用できるようにしたいのです。私自身、学習への貪欲さを持ち続けており、持続可能なラーニングコミュニティでの学びに大きな関心があり、実際、そうしたコミュニティから多くの恩恵を受けてきました。GCM参加の際も、こうした学びの姿勢が非常に役立ったと感じています。

これからは、ダイバーシティー受容を基本としたコミュニティに貢献できる「海外書籍の読書会」や「得る英語™️」でLEGO®ブロックで作ったモデルを表現する)」などの展開支援もしていきたいと考えています。

また、LSPを単発の研修で終わらせるのではなく、年間を通じて組織の変容を見届けられるようなプログラムを設計していきます。短期的な成果だけでなく、時間をかけてじわじわと起きる変化を支援できる仕組みを作ることがネクストアクションです。

これから受講する人へのメッセージ

Q】 受講に興味を持たれている方や迷っている方に一言お願いします。

LEGO®ブロックは「子供向けのおもちゃ」だと思っている方にこそ、ぜひ体験していただきたいです。

LEGO®ブロックを触っているうちに自己開示が自然と起こり、気づけば深い対話が始まっている。頭で考えるよりも先に手が動き、心の奥の声が形になって出てきます。脳科学とも関連があったりして興味深いのです。特に、頭でっかちになりがちな管理職(上層部)や、キャリアの選択肢をガチガチに決めてしまっている方におすすめです。

「こうあるべき」という枠を一度外して、自分の可能性を柔らかく見つめ直すきっかけをLSPは与えてくれます。

そして、トレーニングを受けると「なぜあの問いをするのか」「なぜこの順序なのか」といった裏側の設計思想がゆるやかに見えてきます。それは単にファシリテーションの技術を学ぶこと以上に、自分自身の思考や関わり方を根本から見直す体験になると思います。迷っているなら、ぜひ飛び込んでみてほしいです。

田栗万悠(たぐり・まゆみ)
キャリアコンサルタント/メンタルヘルスカウンセラー
レゴ®シリアスプレイ®メソッドと 教材活用トレーニング修了認定ファシリテータ


LEGO® SERIOUS PLAY® ファシリテータ養成トレーニングのご案内

(株)ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツが提供する公式LEGO® SERIOUS PLAY®メソッドと教材活用トレーニングは、4日間でLSPの哲学と実践を体系的に学べるプログラムです。

対象:

キャリアの軸を模索している方、ファシリテーションや組織づくりに関心を持つ方、教育・研修の現場で「もっと参加者が主体的に関わる場をつくりたい」と感じている方に特におすすめです。

トレーニングの内容:LSPの背景理論、基本プロセス、プログラム設計と実践演習

詳しくはこちらをご覧ください。

修了証:Association of Master Trainers in the LEGO®️ SERIOUS PLAY®️ method(本部:デンマーク)発行の公式修了認定証を授与

2025年は10月・11月・12月に開催予定!

お申し込み・詳細はこちら

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