INFORMATIONインフォメーション

NEWSその他お知らせ

2025-10-19

「LSPで広がるキャリアと実践:ファシリテータたちの物語」
第9回

LEGO® SERIOUS PLAY®(LSP)は、世界中で組織変革や教育の現場に導入されている、対話と創造のためのメソッドです。

この記事では、LSPファシリテータ養成トレーニングを修了した方々の実践と気づきを紹介します。彼らがどのように自分の仕事や人生にLSPを取り入れたのか——その生の声から、あなた自身の現場でのヒントや次の一歩を見つけていただければと思います。

今回のインタビュー:
沖縄県で子供向けのSTEAM教育スクールを運営している株式会社RPの代表、小渡美和子さんは、レゴ社が運営していた「レゴ®スクール」との出会いからその人生が大きく変わりました。彼女のLEGO®︎ SERIOUS PLAY®︎との出会い、そして沖縄での挑戦とは —-


シンガポールで感じた“教育へのアクセスのしやすさ”

小渡美和子さんが教育というものに興味を持ちはじめたのは、娘さんとともに暮らしたシンガポールでの経験がきっかけでした。

「シンガポールでは、“教育”が特別なものではなく、日常の中に自然に溶け込んでいるように感じました。たとえばリトミック教室ひとつとっても、月謝制だけでなくチケット制や1回だけのドロップインなど、参加のハードルがとても低いんです」。

興味を持ったときにすぐ体験でき、子どもが自分に合うものを見つけやすい仕組み。 「親も子も“まずやってみよう”と気軽に動ける。そんな環境が本当に楽しくて、娘と一緒にいろんな体験をしました」。 教育のあり方というより、“学びの機会への開かれ方”に心を動かされたといいます。 「日本ではどうしても“ちゃんと通わなきゃ”とか“続けられるか不安”と考えがちですが、シンガポールでは“やってみよう”が当たり前。その軽やかさがとても印象的でした」。

この体験が、後に彼女が教育の世界に携わる大きなきっかけとなりました。

沖縄で直面した教育格差

2017年、夫の帰郷で家族とともに沖縄へ移住。 ところが、そこで待っていたのは、シンガポールで感じた“教育へのアクセスのしやすさ”とはまったく異なる現実でした。

「教育格差という言葉は好きではありませんが、東京や海外では、やりたいことをすぐ試せる環境がありますが、移住当初の沖縄では“そもそも選択肢が少ない”。学びにアクセスする機会そのものが限られていると感じました」。

その違いに戸惑いながらも、娘さんの学びの場を探す中で、偶然出会ったのが沖縄のレゴ®スクールでした。

沖縄で出会ったレゴ®教育

娘さんが通い始めたそのレゴ®スクール(現STEAM Campus)で、小渡さんは大きな発見をします。

「ブロックを通じて、子どもたちが自然に会話し、協力し、時に評価し合いながら自分の考えを表現していく。そのプロセスに“遊び”と“学び”が見事に融合していました」。

単なる知識の詰め込みではなく、好奇心と探究心を中心に据えた教育。

「こんな楽しい教育があるんだ」と感動した小渡さんにとって、自分の子どもにも、沖縄の子どもたちにも必要だと素直に思える学びとの出会いでした。

妊娠中の決断 ― 教室を守るために

しかし、まもなくコロナ禍が直撃。沖縄のレゴ®スクールも運営が厳しくなり、閉鎖の危機に陥りました。

「東京なら代わりの選択肢があります。でも沖縄では、なくなれば本当に“ゼロ”になる。その現実を想像したとき、いても立ってもいられませんでした」。

当時、小渡さんは妊娠中。それでも彼女は決断します。

「迷っている時間はありませんでした。子どもたちの学びの場を絶やしてはいけない。その一心で会社を立ち上げ、運営を引き継ぎました」。

経営経験はゼロ。育児との両立も想像を超える大変さでしたが、「誰かがやらなければ」という使命感が彼女を支えました。

経営の限界とLSPとの出会い

スクール運営を続ける中で、次第に経営者としての壁にも直面します。
人材育成、意思決定、組織づくり――これまで経験のない課題が次々と現れました。

そんなとき耳にしたのが、「大人向けのレゴがある」という言葉。
「最初は“レゴ好きの大人が集まる場なのかな”くらいに思っていました。でも何か突破口になるかもしれないと、LEGO® SERIOUS PLAY®(以下LSP)を受講することにしたんです」。

LSPは、手を使ってモデルを組み立て、自分の思考を形にし、他者と共有する手法です。
「驚きました。考えているだけでは到達できなかった視点に、自然とアクセスできる。ブロックが媒介になることで、自分の中の声が“見える化”されるんです」。
受講を終えた瞬間、小渡さんは「自分が別人になったようだった」と振り返ります。

経営者としてだけでなく、一人の人間としても新たなステージに踏み出せた感覚があったといいます。

子ども向け教育との一貫性

さらに彼女を驚かせたのは、子ども向けのレゴ®教育とLSPが「同じ構造」を持っていたことでした。

「エデュケーションもLSPも、対象が子どもか大人かの違いだけで、学びのプロセスは同じ。“問いに対して自ら手を動かし、表現し、考え、共有する”という本質が共通していたんです」。

レゴ®教育の理念の一貫性を実感し、彼女の中で教育と経営の軸が一本につながりました。

沖縄から未来を紡ぐ

沖縄という地で活動を続ける意味を問うと、小渡さんは迷わずこう語ります。

「東京やシンガポールなら教育の選択肢はいくらでもあります。でも沖縄はそうではない。だからこそ、私が動く意味がある。そして、都市圏の教育水準に遅れているだけではない沖縄ならではのユニークな魅力を教育に携わりながら私も教えてもらっている。沖縄で生きていく自分にも必要なプロセスだった。そう思ったんです」。

教育と経営を両立させるのは簡単ではありません。それでも彼女の言葉には、焦りよりも確かな覚悟がある。

「沖縄の子どもたちの未来の選択肢を、少しでも広げたい」——その思いが、静かに彼女を動かしています。

仲間と共に育つ ― LSPコミュニティの力

小渡さんはLSPの価値を「手法」だけでなく「コミュニティ」に見出しています。

ファシリテーターやトレーナーとの対話を通じて、多様な視点や知恵を得られること。
「LSPのコミュニティは単なるネットワークではなく、互いの挑戦を支え合う仲間の集まりです。そこで交わされる経験が、自分一人では辿り着けない発想を生み出してくれるんです」。

多様な文化や価値観に触れることで、自分自身の思考の幅も広がっていきました。

問い”から始める関わり方へ

LSPを通じて、小渡さんの周囲への関わり方にも大きな変化がありました。

「以前は、社員や子どもたちを表情や態度だけで判断しているところがありました。でも今は“相手の中に答えがある”と信じて、まず問いかけて耳を傾けるようになりました」。

その姿勢がスクールにも浸透し、子どもたちやスタッフが主体的に意見を交わす風土が育っています。

「相手が誰であれ、リスペクトを起点に“問い”から始めるだけで、関係はまったく変わる」。

そう語る彼女の言葉には、実践から生まれた確かな手応えがあります。

受講を迷う人へ ― 体験して初めてわかる世界

最後に、LSP受講を検討している人へのメッセージを尋ねました。

「少しでも“気になる”と思ったら、ぜひ受けてみてほしいです。私は最初、疑い半分でしたが、体験して人生が変わりました」。

そしてこう続けます。
「LSPには“自分の中の答えに気づくこと”“人と深くつながること”“自分が変わっていくこと”のすべてが詰まっています。頭で理解するのではなく、体験してこそわかる世界です」

小渡美和子さんの物語は、教育の未来が“場所ではなく、人の意志から生まれる”ことを教えてくれます。

小渡美和子(おど みわこ)
株式会社RP代表
レゴ®シリアスプレイ®メソッドと 教材活用トレーニング修了認定ファシリテータ


LEGO® SERIOUS PLAY® ファシリテータ養成トレーニングのご案内

(株)ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツが提供する公式LEGO® SERIOUS PLAY®メソッドと教材活用トレーニングは、4日間でLSPの哲学と実践を体系的に学べるプログラムです。

対象:キャリアの軸を模索している方、ファシリテーションや組織づくりに関心を持つ方、教育・研修の現場で「もっと参加者が主体的に関わる場をつくりたい」と感じている方に特におすすめです。

トレーニングの内容:LSPの背景理論、基本プロセス、プログラム設計と実践演習

詳しくはこちらをご覧ください。

修了証:Association of Master Trainers in the LEGO®️ SERIOUS PLAY®️ method(本部:デンマーク)発行の公式修了認定証を授与

2025年は10月・11月・12月に開催予定!

お申し込み・詳細はこちら

アーカイブス