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2025-09-26

「LSPで広がるキャリアと実践:ファシリテータたちの物語」
第4回

LEGO® SERIOUS PLAY®(LSP)は、世界中で組織変革や教育の現場に導入されている、対話と創造のためのメソッドです。

この記事では、LSPファシリテータ養成トレーニングを修了した方々の実践と気づきを紹介します。彼らがどのように自分の仕事や人生にLSPを取り入れたのか――その生の声から、あなた自身の現場でのヒントや次の一歩を見つけていただければと思います。

今回のインタビュー:
付箋では“正解らしい言葉”しか出てこない――行政・企業の新規事業づくりの現場で壁にぶつかっていた谷津さんは、2023年4月にLSPトレーニングを受講。「プロセスを信じろ」を胸に、わずか2週間後の現場で導入しました。いまは教育と事業開発をつなぐ「ワガママLab」でも課題を可視化する核としてLSPを位置づけています。谷津さんがどのようにLSPを活用し、現場の対話を変えてきたのかを紹介します。


本音と向き合うワークショップ:LSPとの出会い

谷津さんは、行政や企業向けに新規事業開発の支援を行う中で、ある共通の課題を感じていたといいます。それは、「参加者が本音を話すことに慣れていない」こと、そして「付箋を活用したワークショップが上手くいかない」ことでした。多くの日本人は、すでに意見を持っているわけではなく、その場にふさわしい「正解」を書いてしまう傾向があるため、後日その内容を実践に活かそうとしても、全く使えない状態に頻繁にぶつかっていたそうです 。

このような課題意識から、「このままでは成果が出ない」と感じた谷津さんは、知人がLSPを実践していることを知り、受講を決意します。最初にLSPに触れた時から「いつか機会があれば必ず受講しよう」と心に決めていたといいます 。

プロセスを信じろ:トレーニングでの学び

2023年4月にLSPファシリテーター養成トレーニングを受講した谷津さんは、4日間という長いトレーニング期間で、多くの学びと気づきを得ました。中でも最も印象的だったのは、トレーナーから繰り返し言われた「

プロセスを信じろ」という言葉でした 。

それまで、ワークショップのファシリテーションにある程度の自信を持っていた谷津さんは、時として「このままではうまくいかなそうだ」と感じると、その場でやり方を変えてしまうことがあったといいます。しかし、LSPのトレーニングを通じて、定められたプロセスに忠実に従うことの重要性を学びました。そして、その通りに実践することで、ワークショップが成功することを実感したそうです 。

また、初日に実施された、参加者各自の「仕事」をブロックで表現するワークも、谷津さんにとって衝撃的な体験でした。普段はなかなか語られない、それぞれの仕事に対する深い思いや、抱えている葛藤、そして「悪夢のようなチームメンバー」のお題に対して作品を作成している時、谷津さんは、「ここまでみんな出すんだ」と驚き、LSPが人の内面を素直に引き出す力を持つことを改めて認識しました 。

誰かの人生を変える力:LSPの実践

トレーニング終了後、谷津さんはすぐにLSPを実践に移しました。トレーニング終了からわずか2週間後には、行政事業の中で地域住民の「普段の仕事や生活の中であきらめていることや我慢していること」を可視化し、地域活動につなげる「ワガママ会議」でLSPを導入しました 。

その後も、行政や企業でのLSPの活用を継続し、多くの成果を上げています。特に印象的なのは、LSPが人の「自己肯定感」を高める瞬間です 。行政職員向けのワークショップの中で、参加者の1人である水道課の職員が、自身の仕事を「地域の人々が安全に水道インフラを使えるようにする守り人」と表現した時、周りのチームメンバーから大きな共感と感動が生まれました 。LSPは、書類仕事のような細かい業務内容を語るのではなく、その仕事に込めた思いや、より抽象的な意味合いを表現させることで、参加者同士の相互理解を深め、自分たちの仕事の意義を再認識させる力を持っています 。

さらに、谷津さんのワークショップを体験した参加者のうち、3~4人が実際にLSPのファシリテーター養成トレーニングを受講しているといいます 。これは、他のワークショップ手法ではなかなか見られない現象であり、LSPが人を動かし、人生を変える力を持っていることの証であると語ります 。

未来への展望とLSPが持つ可能性

谷津さんは現在、「コンピュテーショナルアクション(計算論的実践)」という概念を掲げ、コンピュータを使って誰かの課題を解決する、スマートフォンアプリ開発のプログラム「ワガママLab」を国内外の教育機関に提供しています 。

この活動において、谷津さんはLSPが果たす役割の大きさを感じています。何かを作るプログラミングの前に、まずLSPで「誰かの課題」を可視化し、考えを整理することが非常に重要だと考えています 。LSPは、自分の考えがまとまっていない人や、何を言えばいいか分からない人の思考の整理に、非常に有効なツールとなるからです 。

最後に、これからLSPファシリテーターを目指す方々へのメッセージを求めると、谷津さんは力強くこう語ってくれました。「LSPは、誰かの人生をポジティブに変化させる機会を与えてくれます。自分が関わることによって、誰かの人生を変えられるような人になりたいと思っている人がいたら、LSPは間違いなくそのツールです」 。

LSPは、単なるワークショップツールではありません。それは、人々が自分自身や他者と向き合い、本質的な課題を浮き彫りにし、ポジティブな変化を生み出すための、強力な人生の変革ツールなのです。

谷津さんの率いる IRODORI では、現在、ワガママLabを海外の教育機関へのプログラム導入を加速させており、一緒に活動してくれる仲間を探しています。特に、英語が話せるLSPファシリテーターを求めているとのことです 。

注釈:「コンピューテーショナルアクション(Computational Action 計算論的実践)」とは、MITのハル・アベルソン教授が提唱する、スマホなどの装置を使って自分自身や地域の課題を解決していこうとする思想とこの思想に共鳴した人々が世界で実践する運動を指します。

参考:https://raise.mit.edu/research/research-projects/computational-action/

谷津孝啓 さん
株式会社IRODORI 代表取締役
https://irodori-group.jp/
https://wagamamalab.jp/posts/meeting/

LEGO®シリアスプレイ®メソッドと 教材活用トレーニング修了認定ファシリテータ


LEGO® SERIOUS PLAY® ファシリテータ養成トレーニングのご案内

(株)ロバート・ラスムセン・アンド・アソシエイツが提供する公式LEGO® SERIOUS PLAY®メソッドと教材活用トレーニングは、4日間でLSPの哲学と実践を体系的に学べるプログラムです。

対象:

キャリアチェンジや学び直しを考えている方、教育・人材育成の現場に関わる方、組織開発やチームづくりに取り組む方、そして「今の会議や話し合いの場をもっと意味あるものに変えたい」と思っている方に特におすすめです。学校教育や探究学習、地域活動や学習デザインに携わる方、学びの場をもっと対話的で創造的にしたいと考える方におすすめです。

谷津さんのように、現場で参加者が自ら語り出す瞬間を大切にしたい方にとって大きなヒントとなるはずです。

トレーニングの内容:LSPの背景理論、基本プロセス、プログラム設計と実践演習
詳しくはこちらをご覧ください。

修了証:Association of Master Trainers in the LEGO®️ SERIOUS PLAY®️ method(本部:デンマーク)発行の公式修了認定証を授与

2025年は10月・11月・12月に開催予定!

お申し込み・詳細はこちら。

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